「あたし彼女」を読んでみた
ちょっと前に話題になった「あたし彼女」を読んでみた。
ああいうフォーマットで何十ページもある作品を読みきる人もすごいが書く人もすごいと思ったね、全体像見渡せない状態でポチポチ指で文字入力してちゃんと読める内容になってるってのが。
私は無理だなあ。日記書くだけでも全文一気に表示される環境じゃないとだめだ。直前に書いたことすら読み返さないと忘れるし。
で、最初は「なんでこんなのが評価されてるんだろう」と思ってた。
言い直す。「なんでみんなこれを読み切れるのだろう」と思ったわけです。
評価が高いってことは、みんな読んだわけだ。でも、あの携帯小説特有のフォーマットが苦手で最初のページで目が滑って読み切れないって放り投げた私にはいいか悪いか論じることすらできない。ただまあ、それでも我慢して何ページか読んでるうちに、なんとなく気がついたことがある。あの読み手に語りかけるような口調と単語単語で細切れに改行された書き方は、チャットのログに似てる。それも一回にたくさんの文字を入力できないネトゲのチャットログ。
知り合いとサシで話していて片方が何かの原因で盛り上がって一人で語りだし、もう一人は合間合間に「うん」とか「ほー」とか合いの手を入れてる状態。
A:あのさ B:うん A:きいてくれる? B:うん A:おれ A:ぶっちゃけさー A:最初はどうでもよかったのよ B:何が? A:なんつうの、ひとりで遊んでるだけだと A:時々ふっとつまんなくなることってなくね? B:うん A:誰でもいいからかまってほしくて A:そんでメールしたわけ A:あの子に B:なる A:んで、「いいよー」とか返事が来て A:それから A:何日か一緒に遊んで A:で B:うん A:それが気がついたら B:うん A:笑えるよな A:一緒にいない時もずっと A:そいつのことを考えてるの B:はは・・・
その合いの手を削除して片方だけの発言だけ抜き出すと「あたし彼女」みたいな感じの文になるな。
あのさ きいてくれる? おれ ぶっちゃけさー 最初はどうでもよかったのよ なんつうの、ひとりで遊んでるだけだと 時々ふっとつまんなくなることってなくね? 誰でもいいからかまってほしくて そんでメールしたわけ あの子に んで、「いいよー」とか返事が来て それから 何日か一緒に遊んで で それが気がついたら 笑えるよな 一緒にいない時もずっと そいつのことを考えてるの
似てるなと、思ったんですよ。なんとなく別世界の文化だと思ってたものの一部に自分が今までいた文化の一部との共通点を見出したわけです。
いやま、もちろん話してる内容も口調も違うし、そもそもチャットでの雑談なんて、話してる相手以外のだれに見せるつもりもない、ドラマも落ちも何もないただの自分語りでしかないものだから、たくさんの人に読んでもらうことを前提に書いた小説とは全然別物なのだけど。
でも、それまでは「なにこれー小説?」と思ってたのが、こういうフォーマットの読み物もありなのかな。という気分になってきたわけで。そこで、思い直して続きを読もうと思ったんですが、そもそも私は他人のコイバナに全く興味がないため、やっぱり最後まで読み切れませんでした。考えてみたら、恋愛小説とかドラマとか全然見ない人なんだよね。
きっと、途中で主人公の女の子が異次元に飛ばされたり、宇宙から侵略者が襲ってきたりしてたらどんな形態でも熱心に読んでたのかもしれない。
みたいな。
あ、ちなみに↑のチャットっぽい文章は創作です。